前回の骨折ダイアリー:骨折ダイアリーVol.4
2016年5月2日 AM6:30
ゴールデンウィーク中といいつつも、今日は祝日でもなく、平日。
そして月曜日。ブルーマンデー……
だが僕が起きたのは早朝。まさに早朝だ。
普段早朝になんて起きない僕がここ数日は6時台に起きてる。
昨日までは「痛みのせいで眠れずそのまま朝チュンでした」系男子だったが、今日はわけが違う。
太陽の光が心地良い。あんまり光が差さないこの病室も明るくなってる。
なんつーか、日本晴れだ。
相変わらずやることはないんだけど、とにかく気分がいいので動きたい。頭は痛いけど動きたい。
朝ごはんを少し食べ、歯を磨き終えて、いつものようにまた横になる。
何だろうこの感じ。ワクワクが止まらない。
あ、たぶんコレ平日だからだ。
みんなが頑張って働くって日に、こうやって横になれる幸せ……
傍から見たら、病床に伏したアラサーが現実逃避してるようにしか見えないけどキニシナイ
もくじ
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お見舞いラッシュ
日も高まってお昼に近づいたころ、友達夫婦から「お見舞いに来る」と連絡が。
おお、嬉しい!!
この友人夫婦は今日東京を離れ、九州に旅立つ予定だったのだが、飛行機に乗る直前に訪問してくれるというファンタスティックなサプライズ……テンション上がるゥ!
その後面会。入院してからは初めて会う友達を前にして、涙腺が緩む。
怪我の顛末をひとしきり説明すると、思いのほか心配されちゃったので「まあ大丈夫」と強がる。
取り留めのない話だけど、こんなやり取りでも元気は出るもんだ。サンキュートッモ
ベッドで動けないこともあり「何か欲しいものある?」と聞かれた。
僕は「ぬくもり」と答えた。ちなみに嘘だ
冗談は置いといて、水分は取っといて悪いことはないということで、ポカリスウェットを買ってきてくれた。
1ダースも
おお……こんだけあれば飲み終わるころには僕の干上がった髄液も、スーパー潤いモイスチャーミルクな感じで回復して頭痛ともオサラバできるはず。サンキュートッモ
そんな中、予定のない来客がもう一人……
先日僕がハリウッド映画ばりの骨折かましちゃった施設のスタッフさんだった。その節はどーも……
スタッフさんは入ってくるなり「うわ~、大丈夫でしたか?」とめちゃくちゃ心配げ。
そらそうよね、目の前で足真っ二つな勢いで折れる瞬間見てたんだもんね。僕だって同じ立場だったら見ただけでトラウマもんです。ヒヒーン!
ここ数日だけでも色々ありましたが大丈夫です。なんとか生きてます。ちゅーかお騒がせしてごめんなさい
あの時の周りのお客さんの表情が今でも忘れられません。手術が終わって冷静に思い出すと、みんな
こんな顔してた。そらそうよね、今自分で自分の足が折れた映像を思い浮かべても「痛そう……」ってなるもん。他人事やな
まああれです、そんな感じです。
ここで最初に来てくれた友人は飛行機の時間が迫ってきたため退場。しばらくそのスタッフさんと話すことに。
「これ、差し入れです!」
差し入れはミスタードーナツ、本、トトロのぬいぐるみ
なるほど、ドーナツを食いつつ本で暇を潰し、寂しさをトトロでカバーするってプランね。ええチョイスかましてくるやん
ていうか何? 今日やたらサプライズが続くんだけど? もうアレですか、骨折から仕組まれてたサプライズってオチ?
もう気分は感動のサプライズバースデー。BornにBoneをかけました! ってやかましいわ
とにかく、みんなの善意で殺風景だった病室が少し華やいだ。ありがてぇ……
「ケガが治ったらまたみんなで飲みに行きましょう!」
そう言い残してスタッフさんも退場。なんか夢のような一時だった。
ひとしきりほんわかタイムを堪能した矢先に今度は嫁からの電話。
なんでも、転院しようとしている病院に連絡がついて、婦長さんから今いる病院に紹介状を貰えるように連絡してくれるとのこと。
おお! ついに!!
僕は心が躍った。というか嬉しくて心どころか物理的に小躍りしてた
そんなエクストリーム朗報な電話をしている最中、あの悪名高きボチャ子が病室に侵入してくる。
なんか嫌な予感……
ボチャ子「Y病院の方から転院の話が来たのですが」
ぼく「はい」
ボチャ子「そういうことは先に言ってもらわないと困るんですよね」
ぼく「はあ(言ったけど)」
ボチャ子「うちにとっては寝耳に水なので」
ぼく「」
すごくない? こんな数回の会話のキャッチボールでイヤな感じ出せるって才能だと思う。マジその腕でメジャー狙える。全部大暴投
しかも「寝耳に水」て。こんな事務的な会話に何イキってことわざなんかブレンドしちゃってんの? さっきもらったポカリ耳にぶち込んだるぞ
実際は転院の件は初日に女院長に連絡済みで、覚えてないのはそっちやんけ……
まあ言った言わないの水掛け論を展開しても埒が明かないので、我慢して話を進めることに。寝耳に水とか水掛け論とか、ビシャビシャやなこの現場
ぼく「これから手続きしてどれくらいで転院出来ますか?」
ボチャ子「主治医の先生が入院しているので、次回来るのは……いつだったかな」
え!?!?
担当医の先生が入院!? とりあえず目の前の事実に動揺する。
しかしよくよく考えると、手術日以降まったく顔見てなかったっけと合点がいく。
入院の原因は何だろうか。医者の不養生なのか不幸な事故なのか。
こんな動物園状態の病院だからストレスで胃に穴でもあいたんじゃなかろうか。僕がここの職員だったらアルマゲドンクラスの穴が炸裂する自信がある
とにかく転院はその主治医に紹介状を書いてもらってからの話らしい。なにこの無理ゲー
そんなようなことをモゴモゴ言いながら、不機嫌そうな赤ちゃんみたいな面をしてボチャ子は病室を出て行った。
まだ嫁との電話はつながっていた。
「俺、あいつ嫌い(ボソッ)」
電話口で呟いて切った。嫁は笑っていた
仁義なきリハビリ
2016年5月2日 PM4:30
謎のサプライズお見舞いラッシュも一旦落ち着き、また屍のように横になっていたが、なんか落ち着かない。
というのも、今日から本格的なリハビリに入ると先日通告があったから。
いよいよ本格的なリハビリ。前回のような、数メートルそこらを歩いて「クララが立った♪」なレベルとはわけが違う。腰を据え、力強く大地を跳ね、ロッテンマイヤーに飛び蹴りを食らわすくらいの過酷さを覚悟している。ロッテンマイヤーさんかわいそう
しかしリハビリの時間はお昼過ぎたあたりと聞いていたが、一向にお呼びがかからない。
おいおい大丈夫か? もう夕食が近くなってきたぞ? と半ばほったらかしにされた気分になりながらナースコールを押すと
職員「はい」
ぼく「あのー、今日午後からリハビリって言われてたんですけど、何時くらいからになるんでしょうか?」
ちょっと不安げに聞く。
職員「え、まだお話しされてない? ちょっと確認してきますね」
え、どゆこと? もうリハビリしてるはずの時間なの??
そんな不安を抱えながら回答を待つこと約5分――
職員「今いいですよ、行きますか」
え!? 何その行き当たりばったり感……
そう、ほったらかしにされた気分じゃなくて本当にほったらかしだった。せめて「あと1時間くらいですね」とかうまく回してる感出してくれよ……
一人でブツブツ愚痴りながらリハビリ室に行く。
到着したリハビリ室には3人の男の人がいた。
一人は前回のプチリハビリで松葉杖の使い方を教えてくれた優しいお兄さん。もう一人は最初にこの病院に担ぎ込まれたときに受付にいたあのジーニー。さらもう一人はガラガラ声で見た目イカツイおっさん。イカツイおっさんはヤクザとでも呼んでおこう
見ててこれほど序列が分かりやすいビューも珍しい。あくせく働くのはお兄さんだけという感じで、あとの二人はジャイアンとスネ夫状態。
早速お兄さんの案内で施術用の革ベッドに横になる。
するとお兄さんが膝の曲げ伸ばしを補助する装置を部屋の奥から担ぎ込んできてくれたのだが、如何せん機器が大きいのでコードなどが置いてあるものに引っかかってしまう。一人で運ぶの大変だよね
その瞬間
「なーにやってんだよ!!」
ヤクザが声を荒げた。そんなに大きな声じゃなくても聞こえるやろ? ってくらいデカイ声。自分が言われたわけじゃないが何となくイヤな感じ。
飲食店なんかで客の前で従業員叱る店長いるじゃん? まんまあんなシチュエーション。
その後もリハビリの装具の手配でもたつくお兄さんを横から詰めるヤクザ。正直、ヤクザがこんだけプレッシャーかけなければお兄さんはこんなに焦ってないと思う
ただこのヤクザ、僕には優しい。
ヤクザ「ちょっと待っててくれな、俺が足持ってるから」
と体勢がきつい僕の補助はしてくれる。さすが、ヤクザは堅気には優しい。
だけどそれまでのお兄さんへの態度で、もうヤクザの人間性が自分の中で固まってしまった僕は、どうしてもヤクザの厚意を真正面から受け入れられなくなっていた。
とりあえずハハハと愛想笑いでごまかしてる間にお兄さんの作業は終わっていた。グッジョブお兄さん
一旦リハビリ装置が動き出すと、残りは機械の仕事なのであとは放置。ヤクザ、お兄さん、ジーニーも別の仕事に移り始めた
僕以外誰もいない静かなリハビリ室。ただ時だけが流れていく。
しばらくすると、何やらヤクザとジーニーが会話している声が聞こえた。
ヤクザ「□□党のあいついるじゃん、あいつ。偉そうなこと言いながらなんもできてねぇじゃねえか」
ジーニー「そうっすよね、なんなんでしょうねあいつら」
ヤクザ「俺に言わせると○○は△△を批判してるけど一緒なんだよ」
ジーニー「マジっすよね。こういう顔ですよね(スマホで画像検索とかしてるっぽい)」
ヤクザ「それそれ。それだよ」
なんつーか、すごくわかりやすいお山の大将とその腰巾着の会話。
つーかね、ジーニーの相槌の語彙力がヤバい。ハチャメチャ語彙力の僕が言うのもなんだけどヤバい
会話に中身がないとかいうレベルじゃない。魂がない。お前はもう死んでいる
お兄さんは少し離れたところで何か作業をしている。向こうにとっちゃこれが日常なんだろうけど、なんか可哀想。
ほんの30~40分くらいでリハビリは終わったが、イヤーな気持ちを残して部屋に戻った。「俺に言わせると」という僕史上屈指の「偉そうな台詞集(主観)」が出てきたのがデカい。「俺に言わせると」って誰がお前に言わせるんだよ。リハビリ器具にでも向かってしゃべってろ
荒んだ心を病室に運び込んでしまった僕だったが、また嬉しい知らせが待っていた。
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お見舞いラッシュ2
2016年5月2日 PM6:00
リハビリを終えた僕は病室でしばしのリラックスタイムに臥していた。
そして今度は別の友人夫婦がお見舞いに来てくれるという連続サプライズ。
ヤバい。今日はずっと友達に会いっぱなしの超最高なスケジュール。気分は全国ツアーを回るボンジョヴィ
そんなウキウキウッキーなお猿さん状態の僕に更なる朗報が。
看護師さん「せいじさん、今日から髪洗えますよ」
うっっっっひょぉぉおぉおおぉぉおおう!!
待っていた!! その言葉を待っていたぜコンチクショウ!!
そう、足を折ってからまだ6日ほどではあったが、とにかく頭がベトベトで気持ち悪かった。もう頭にラードのっけてんじゃないかってくらいベトベトで、あと数日このままだったら髪の毛全部剃り落としてピカールで磨いてるんじゃねーかってレベル。やんないけど
とにかく、この気持ち悪さがどうにかならんものかとずっと思っていたのだが、ついに洗髪が解禁されたというわけ。マジ嬉しい
洗い場は病院の設備なのでシャンプーは使い慣れていないものだし、シャワー室ではなく洗面所なので洗いにくさは否めない。でもそんなの関係ねぇ!
ずっと横になってたせいで、縦に固まってポルナレフ状態だった髪型とも今日で完全にオサラバ!!
早速松葉杖を手に取り洗面台に直行、速やかに頭を垂れる。
もうね……湯をかけた瞬間……もうね……頭溶けるかと思った。少し溶けてたと思う
なんか、頭全体が汚れみたいな感じ。「地肌が」とか「キューティクルが」とかそんなチャチな話じゃない。頭全体。アンパンマンの新しい顔状態
気持ちよくて思わず2回シャンプーして念入りに洗ってしまった。そして最後にドライヤーで乾かし切った時の爽快感ッッ……
出典:『ジョジョの奇妙な冒険Part4-ダイヤモンドは砕けない-』より
頭の毛穴という毛穴から喜びの声が止まない。ちょっとキャッキャ聞こえる
僕はお風呂に入れることの喜びを再認識しながら、ニヤニヤした面で病室に戻った。お風呂まだ入ってないけど
そしてちょうどお見舞い受け入れ態勢万全になった瞬間に友人夫婦到着。完璧すぎるスケジュールにビビる僕。今日って大安だっけ?
今回お見舞いに来た友人は、僕の足の状態がここまでヤバいと思っていなかったらしく、来て足を見るなり若干引いていた。
うん、うん、わかるよ。もうね、引かれ慣れた。っていうか自分自身も引いてる
またお見舞い品にお菓子を頂く。今日は本当に有り難いことだらけ。この病院じゃなかったらさらに幸福度上がってると思う
ただ、面会時間は残り1時間半。残酷だが、この時間を大切にしなければ!
……と思いつつ、転院の話も気になる。あのボチャ子に転院の話をしたところで「どーせあいつは上に話を持っていかない」という絶大な信頼感にも似た不信感があるので、この話は別の看護師さんに改めて相談することにした。
看護師さん「あ、まだ転院の手続き進展してませんでしたか?」
ええ、してないんですよこれが。なんで全然話が返ってこないのか不安でなりませんでございますのよ……
その看護師さんからは「分かりました、また上に話をしてみますね」と前向きなお返事を頂いて、本当に感謝。ポーズでもいい、そんな気遣いを頂いただけでも嬉しいです
とりあえず、そんな不安話はさっさと終えてまた友達との談笑に興じる。楽しい。ああ楽しい
しかし、この先を思うとその楽しさと同じだけの寂しさが募る。
ああ、なんで僕はこんなところで独りぼっちなんだろう。
そんな悲観的な考えが頭をよぎる。楽しい時間ほど、終わってしまうと寂しいものだ。
僕が骨折さえしなければ、今頃みんなで居酒屋かなんかで飲みながら馬鹿な話でもしてるんだろう。
僕が骨折さえしなければ、明日は飲みすぎて二日酔いになりながら、しじみ汁をすすって嫁と海外ドラマでも鑑賞してるんだろう。
当たり前の楽しみがすべて奪われたことが、めちゃくちゃしんどい……
ただ良かったこともある。こんな僕でも心配してくれる人がいっぱいいて、こうして顔を見せに来てくれる。オイ泣いてまうやろ
人がこうやって自分の近くにいてくれるって、本当に有り難いこと。それが心に沁みわたるほど理解できたのは、大きな収穫でした。できれば足折らずに気づきたかった
談笑しながらもそんなことを考えていたら、1時間半なんてあっという間。
そう、魔法の時間は終わり。もうみんな帰らなくてはいけない。アカン、また涙が……
賑やかであればあるほどそれが終わった時の虚無感はでかい。
あああみんな行かないでぇぇえええええ!!!! と心の中では女々しい叫びを残しつつ、笑顔でみんなを送り出す。傍から見たら笑ってるのか泣いてるのか分かりづらい顔だったと思う
明日でもう入院も7日目。だけどもう1ヶ月はここで生活してる気がする。
本当に病院というやつは人の時間感覚を狂わせる。動物園も兼ねてるし
こんなところにずっといたら気が変になりそう……
ただ、転院の話は少し進展を見せた感じだったので、そこに関しては満足。
ちなみに嫁と友人夫婦はこのあと居酒屋で二次会。ああ羨ましい
でも、僕がいないことで嫁も家で一人でいるわけだから、それも可哀想。せめて、友達との時間を楽しんでほしい……祭りのあとの孤独に身を震わせながらも、転院への期待を胸に僕は今日も早寝するのであった。
次回の骨折ダイアリー:骨折ダイアリーVol.6
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