【脛骨・腓骨骨折04】入院ストレス本格化!家族のぬくもりを知ったアラサー

骨折ダイアリー
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ゴールデンウィーク初日

前日の手術の痛みが止まぬまま大して眠れず、僕は看護師さんの声で朝を迎えた。

 

「はーい、これで顔を拭いてくださーい」

 

渡されたのは、おしぼり。

一般的におしぼりで顔を拭くというのはみっともないというか、世間でははばかられる行為。しかし、マナーとか見た目に気を遣う余裕もない僕は「病院ではこれが普通なのか……」と自分の知らない常識に感慨深く頷く。そして拭く。

むしろ入院して一度も風呂に入れておらず、モシャっとした僕の脂まみれの頭のほうがよっぽどマナー違反だったりする。今髪の毛燃やしたら脂のおかげでアロマキャンドルなみにいい感じの燃え方すると思う

とにかく、入院してからろくに顔も洗えてないこともあり、めっちゃスッキリ

 

スゲーッ 爽やかな気分だぜ。 新しいパンツをはいたばかりの 正月元旦の朝のよーによォ~~~ッ

 

地獄のような初夜も超え、手術も終えたということで妙に清々しい気分になる。

 

しかーーし!

 

眼鏡をかけ、お日様の下で自分の足が鮮明に見えた瞬間戦慄する。

 

なんじゃこりゃああああーーーー!!

 

骨折で腫れ上がった脚

 

これ、包帯からはみ出した足先です。

この写真だけだと分かりにくいかもしれないけど、パンッパンです。

すっごいパンッパン。クリームパンよりパンッパン

左右から見ると、厚みがやばい。

もうね、足にケツがあるんじゃねーかってくらいパンッパン

 

しばらくはこのミラクルパンパンレッグとお付き合いしながら生活していかなければいけないと考えると、なかなかブルーな話。動かすと痛てーし

しかもそんな不安に満ち満ちた状況の中、今日は嫁の家族が午後に名古屋からお見舞いに来てくれるらしい。嬉しいような、情けないような……

 

とりあえず朝食を取って英気を養う。不安があっても腹は減る。まったく正直な胃袋だ

 

しかし、暇だなぁ……

 

暇をつぶすため、嫁が家から持ってきてくれたノートパソコンで動画を観る。

バラエティ番組を観ながらのん気に笑うんだけど、どこか面白くない。

 

なぜなら、マジで暇だからだ。

 

暇で暇で暇すぎる状況というのは、娯楽における楽しさをミジンコの鼻クソレベルまで降下させてしまう。何やっても張り合いが無い。つーか「何やっても」ってほど何かできるわけでもない

暇すぎるって、とってもつらいんだって実感したアラサーの昼

 

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周知の羞恥

なんとなく昼食も済ませ、14時を回ったころに嫁の家族が到着。

お義父さん、お義母さん、嫁、嫁弟さんの4人で来てくれた。

 

開口一発

 

ぼく「いやー、本当にお恥ずかしい姿を……」

 

これ以外に言葉が見つからない。見舞いに来たのが友達だったら「やべぇわー! 折った瞬間の絶望感ハンパなかったわ―!」とか笑いながら言うところだけど、相手は義両親。

しかも骨折さえしてなかったら今日は保険に加入して堅実な将来を見据えようというタイミング。

 

え、なんなのこれは? 悪夢か?

 

僕の人生における汚点リストがまた新たに更新されたようだ。しかし、思えば汚点だらけの我が人生、こうやってお見舞いに来てくれる人がいるだけで感謝しなければならない。

それを抜いたら、ただ趣味で骨折しただけのアラサー。何の価値もないどころか、働けもしない分不良債権。あー耳が痛い心が痛い足が痛い!!

 

だが、義両親は優しい人たちだ。

僕が保険契約2日前に骨折という超ド級の珍プレーをかましてきたにもかかわらず、決して小言を言わずに明るく接してくれた。

 

お義母さん「あら~! ホントこんなんなっちゃってまぁ……!!」

 

お義父さん「おー……やっちまったなー……」

 

僕を見るなり二人とも超ド級の苦笑い。怪我に、というより僕の運と間の悪さに対してだと思う。たすけて

 

以前義両親の元に帰省する予定の前日にも、僕は運悪く職場でうつされたインフルエンザを発症して年末年始の帰省を潰した過去がある。

ましてや今回は、自分の趣味で事故ってるから、なおのことタチが悪い。

事故の経緯や出来事を話すたびに肩身が狭くなる。

一言話すたびに身体が2cmずつ縮んでってる気分。このままミクロの世界でアメーバになってしまいたい。単細胞生物って何悩んでんのかな

怪我の状態を詳細に話すと歪む義両親の顔。聞いてるだけでも痛いよね

僕も話してるだけで痛いもん。足と心と足が

 

ひとしきり情報共有したところで今度はご歓談タイム。場がある程度和んできて、改めてあたりを見回したお義父さんがポツリ

 

「まあ、ひっどい部屋だな……」

 

ですよねー!!!! 野戦病院とまではいかなくても、廃院寸前なこの作り……幽霊が2〜3人隣で入院してても驚かないよ

 

実はお義父さんも先日体調を崩して入院していたのだが、その部屋は僕と同じくらいの値段でめちゃくちゃいい部屋だったらしい。まあ、その病院は都内ではないから価格差があるのは否めないんだけど、それでもここは酷い。

しかし、そんなひどい環境が家族に対する思い入れをさらに強くしてくれたのも確かだ。一人暮らし歴も多少あり、 家族という存在にそれほど執着のない僕でも、この時ばかりは「家族ってあったかいナリィ……」状態だった。

 

しばらくして、次の用事があるということで嫁ご家族は退出。

帰り際に保険の資料をもらった。

 

お義父さん「まあ、次回はなんかあっても大丈夫なようにな。」

 

もうね、感謝しかない。

もう一回言わして。感謝しかない。

今、目の前にタイムマシンがあったら「保険なんて必要ねーよwww」とかのたまってた過去の自分を背後から5、6発ぶん殴ってから保険の窓口でもこみち窓口させてたと思う。そんくらい僕みたいな人間に保険は大事だ

 

社会人で骨折という非日常に、ふと訪れた「家族」という温かな一陣の風。

しかし風は嵐を呼び、嵐は波乱をもたらすのであった。

 

ホームシッカー俺

お見舞いに来てくれた嫁の家族も帰り、嫁と二人きりになる。

家だと当たり前の光景なんだけど、ここは殺風景な病室。誰かいるだけでもめっちゃ嬉しい

 

「はい、頼まれてたKindle。あと着替えとタオルね。」

 

ああ、このコと結婚したい

自分でも抑えることのできない感情に包まれる。

 

「いや、既に結婚してるやん」とかいうツッコミなんて僕には聞こえません。日本で一夫多妻制が採用されたら第一夫人から第五夫人までこの嫁にするレベル。ええ女やでほんま

しかし、そんな嫁としゃべればしゃべるほど家に帰りたくなるし、こういう時間というのはあっという間に過ぎてしまう。この時点で若干目に涙がジワリ

 

人生には必ず出会いと別れがある。

売れない劇団がやっすい脚本で演じるような、なにか教訓じみたこの言葉を、僕は一日という短いスパンでひしひしと感じた。別れの時は近い……

 

肝心の足の調子はというと、相変わらずアホみたいにパンッパンで、動かせそうな部分をなるべく動かしてエコノミークラス症候群にならないように注意しなければならないが、特に悪くはない。傷を縫合したばかりなので、動かすだけでチクチクするというか突っ張る感じというか、皮膚が気持ち悪く、動かすたびに、「おぉん!」とか「ふぉう!」とか情けない声が出てしまうのがちょっとアレなくらい。

 

ほんで手術も無事終わったってことで、嫁が自宅近くの病院に転院の相談をしようともしてくれていた。僕の方でも、担ぎこまれた当時に転院の意思は示していたので、早く進んでくれないかなーと思ってたので、渡りに船だ。

 

ああ、早く転院したい

 

ネットとかで調べると、転院には入院元の病院から「診療情報提供書」(いわゆる「紹介状」というやつ)を転院先に送付してもらうことが必要らしい。多少面倒な手続きにも思えるけど、自宅近くの転院なら、まず嫁の見舞いも楽だし、前からよく通っていた病院で、設備も綺麗だから精神的にも楽だ。ここ動物園やし

それである程度良くなって来たら、距離も近いので自宅から治療なりリハビリなり通おうかというのが僕の計画で、これなら入院代も浮いて嫁もわざわざ見舞に来なくてよくなるし、メリットしかない。マジウハウハ

足折っちゃったのは仕方ないとして、こういう前向きなことを考えると元気が出てくる。僕は転院に希望を抱きながらウキウキワクワクしていた。

 

……んなことをぼんやり考えてると、気付けば嫁も退出する時間。なんとなく過ごしてるだけでも、誰かいると時間の経過が早い。

今日は、本当ならば叙々苑で焼き肉でも食いながら義両親と談笑してるはずだったのだが、僕は欠席。せめて嫁だけでも家族といいもん食ってほしいので早めに送り出すことにした。

 

焼き肉かぁ……いいなぁー……

 

牛タン、ハラミ、カルビ……!!

 

ジューシーなカルビを口に入れた瞬間、たたみ掛けるように熱々の白ごはんをハフッ……! ハフハフッ……!!

 

あー、味濃いモンばっかり食って喉乾いちゃったよ……ビールでも……キュッ……ゴクゴク……

 

くぅうううーーーー!! 生きてるーーーー!!

 

骨折さえしなきゃこんな未来が待ってたのにーーーー!!

 

チクショォオオーーーー!! ワォオオーーーーン!!!!

 

俺、元気になったら焼き肉食う。

そんなプチ目標を見つけつつ、病院の微妙な味付けの食事を微妙な顔で食べ終わり、就寝。

 

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リハビリスト俺

翌朝

 

「せいじさんおはようございまーす」

 

今日も看護師さんの声で目覚める。昨夜は思いのほか眠れて、入院三日目にしておしぼりで顔ふくのにも慣れてきた。顔カッサカサだけど

 

肝心の足も相変わらずパンッパンだけど、今日は松葉杖を使った簡単なリハビリをやるらしい。

 

おお、早速ですか!

 

1秒でも早く歩けるようになりたいと思っていた僕は、とにかく燃えていた。

松葉杖でどんなリハビリが行われるかも聞いていないのに、既にイメージトレーニング上では一般人の早歩き程度には追いつける自信があった。それもこれも「転院」という田舎から上京なみのビッグイベントを控えているからだ。目標があると人間は強くなれる

 

そんな獅子の心を持った僕のもとに朝食が運ばれてくる。

ああ、腹が減っては戦はできんしな! この食事も輝かしい未来への第一歩や!

 

止まらないポジティブシンキングの中、ノリノリで朝食を食べようとした瞬間、突如強烈な頭痛が発生。

 

んあっ!

 

またもやマキバオーのような奇声を上げながら思わずベッドに倒れこむ。元からベッドにいるんだけど

 

横になってればしばらくは治まるものの、再度身体を起こしてまたズキズキ→即倒れ込むというドリフのコントなみのループに陥っていた。

結局その朝食は頭痛で全く食べられず、意気消沈。

 

とりあえず何もやることがないので今度は映画を観る。

観ていたのは『トランスフォーマー』という映画なんだけど、内容をざっくり言うと宇宙から来たロボットが変形してバカスカ戦う気分爽快な映画だ。面白いから知らない人は観てね

 

そして映画を見ながら思う

「ああ、俺もロボットだったらこんな足、部品を交換してすぐ走れるようになるのに。こんな頭痛とか無縁なのに。」

どんな時でも現実逃避は忘れない。まさに病人の鏡だ。オプティマース!

 

映画を観始めて1時間くらい経ったころ、リハビリの担当さんが来る。

 

「どうもこんにちは」

 

おお、なんか若めの話せるお兄さんだ! 同い年か1~2歳年下くらい?

そんな若さが服着て歩いてるようなヤングナースに松葉杖の使い方を教わるアラサー。上半身はすこぶる元気だし、やる気満々だから呑み込みも早い。ワイはスポンジ! スポンジなんや!

初めて10分くらい経った頃だろうか、松葉杖で生まれたての小鹿のように動き回る僕にヤングナースが不意に声をかける

 

「かなり筋がいいですね。」

 

褒められちゃった。でへへ

褒められると意欲も出てくる。有頂天になった僕は「そろそろ更なる高みを目指しませんか?」くらいの気持ちで次のミッションを待った。

 

ぼく「次はどんな感じのリハビリですか?(キリッ」

 

ヤングナース「今日はこの辺にしときましょう」

 

ぼく「」

 

え、もう終わりなの……

リハビリって、スポ根ドラマとかで見るようにもっとスパルタというか、歯を食いしばって頑張るもんだと思ってたから大いに肩透かし。僕の想像では地面に突っ伏しつつ「触らないで! ここからは自分の力でやるんです!」くらいまでのシーンが出来上がってたのに。僕クララより頑張れるで

焦っても仕方がないのでベッドに戻ると、ちょうど昼食の時間に。

 

あー、もうほんと病院食飽きたー

 

なんて思っていたら、今日の昼食は一味違った。

あの味気なくも健康への配慮感満点な病院食ラインナップにそぐわない、スパゲッティーミートソースというご馳走が出てきた。

これは夢か? 幻か? 病院でパスタとかいうブルジョワなメシが食えるなんて……看護師さんにイタリア人がいるとしか思えません。ボンジョルノ

とにかく、久々の味濃いめのメニューにテンションが上がり、ココロオドル \エンジョーイ!/

 

残念なのは、こんなにおいしそうなメニューなのに、利き手である右手が使えず食べるのに非常に苦労してしまうことだ。

というのがね、3日前から点滴生活絶賛満喫中なんだけど、普通点滴って利き手の逆にするじゃん? 僕の場合は右利きだから左腕

僕もその例に漏れず左腕に点滴してもらうはずだったんだけど、あえなく失敗。こちらとしては100回でも200回でもいいから左腕にチャレンジしてもらいたかったんだけど、もちろん却下。

ほんで点滴側の右手を使って食器類を扱うと、刺さった針が血管の中でグリグリ動く感覚がとても気持ち悪く、極力動かしたくなかったので、入院中はずっとサウスポー。

 

もうね、骨折の痛みと相まって、この制限がマジでイライラすんの。

 

まず、スパゲッティーを巻く行為。利き手じゃないだけで非常にぎこちない。マジでおててスキルが3~4歳レベルに落ちてる感じ

 

お箸なんてもう異国の食器レベルの扱いにくさで、やっと取れた食べ物を口に運ぼうとしても口の寸前でボトッ……チクショウ……

 

自分のドン臭さに恨み言を言いながらも、デザートのゼリーまで何とか完食した。朝は頭痛で全然食べられなかったのに、昼は食べられた。あの頭痛は一過性のものだったんだと胸をなでおろし、僕は嫁が持って来てくれると言っていた夕食のメニューを妄想して悦に浸っていた。

 

なに持ってきてくれるのかな? ピザかな? ピザはねぇか一応病人だもんな。まあ、何でもいいや。一人寂しくごはんを食べなくて済むなら、僕はこれ以上を望まない。

 

あたりまえの日常こそが何よりも嬉しいことなんだと噛みしめながら、嫁を待つ僕。

 

しかし、そんなささやかな希望すらぶち壊す未来が待っているとは、このとき誰も知らなかった……

 

次回の骨折ダイアリー:骨折ダイアリーVol.5



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