これは、脛骨・腓骨を骨折したことで人生が大きく変わってしまった一人の男の手記である……
2016年4月27日 17:00(くもり)
いつものように仕事を終えた僕は慌ただしく帰路についていた。
仕事はデスクワーク中心だったので、運動不足を解消すべく、高校のころ少しかじっていたアクロバット(器械体操)をできる施設に週1で通っていた。いつもは木曜日固定で通ってたんだけど、その日は何故か水曜日。思えばこの時からなんか不穏な空気があったのかもしれない
同日 21:00
特にいつもと変わらない体調、いつもと同じような技。まさか社会人になってオリンピック目指そうとか思ってないので無難な感じでエクササイズ
……のはずだったのだが、着地したかと思われた瞬間
パァン!!
という破裂音。
え、なんなのこれは
戸惑い気味に足を見た瞬間、右足に着地の感覚がないことに気付く。
足が
ブラン……
↑マジでこんな感じ
もうね、あさっての方向とかいうレベルじゃない。足が2年後くらいの方向を向いて踊ってた。
きゃーーーー!!
にゃぁぁああん!!
ワオォーーーーン!!
僕は即、膝から崩れ落ちた。
よく格闘技のアクシデント動画なんかで、向う脛からポッキリなんてあるじゃん?
マジであんな感じ。関節が1個増えたみたいな感じ。
わあ~こんなんなったら俺絶対泣くわ~とかのん気に言ってたけど実際こうなると声とか出ない。ちゅーか涙とか流してる場合じゃない
もうね、どうやったらこの痛みがどこかに飛んで行くのかをとにかく考えてた。史上最大級の痛いの痛いの飛んでけ。無理ゲーやろこんなん
表情とかもこんな感じ↓
まさに鬼気迫る顔
荒れる息、固く閉じていた目を開けるとぐわんぐわん揺れる景色。トニカク イテェ……
ふと見上げると、友達が患部を冷やすための氷を持ってきてくれた。
……けど!! 完全にヤバイ方向を向いている足。冷やしてどうこうレベルではないことはわかっていても、うまくしゃべれない。
「ハッ……ハッ……」
動悸を挟みながら必死に目で伝える。友達も僕の目とそのヤバ気な顔を見て察してくれたんだろう、「大丈夫だよ」と励ましつつそばでじっと見守ってくれた。すまんな
そんな中、施設のスタッフさんは迅速に救急車を要請してくれた。すまんな
だがしかし!!
1秒が長い。とにかく長い。満員のトイレでウンコを我慢しているとかいうレベルじゃない。だってウンコは最悪どこでもできるじゃないですか。しかも即ニュルンと出てきたりしない。話の分かるヤツだ
でも骨はそんなこと気にしない。何の前触れもなく急に折れる。開放性じゃなかったのは不幸中の幸いであった。でもやっぱイテーもんはイテーわ
もう心も折れそう……
できることは歯を食いしばるだけ。とにかく食いしばる。このときの咬む力で奥歯が5ミリくらい短くなってたと思う。結局3~4分で救急隊は来たみたいだけど、体感で言うと30~40分。とにかく長かった……
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地獄の入り口
同日 21:00
骨折した現場に救急隊が来る。痛みにゆがむ顔を空に向けながら思う。
神が来た……
もう大丈夫だ! 病院に連れて行ってもらえるんだ! ホスピターール!
安心したのか、若干周りが見えるようになる。他のみんなは固まっている。そうだよね、こんな現場なかなか見ないよね。トラウマ作っちゃったね。すまんな
救急隊が数人、近づきながら名前や住所を聞いてきた。すると会話で現実に引き戻されたのか再び痛みが襲ってくる。
ぼく「えと……とうky……東京都なkn……」
痛みでテンパって平井堅も真っ青な極上のウィスパーボイスになる。ほぼ100%(痛みの)吐息。冷静に言えるかこんなん
苦戦しながらもなんとか必要情報は伝えた。お次はメインイベント・ストレッチャーに移動だ
ここで僕史上最大級の痛みがやってくる。
ふおおおおおおおお!!!! いてえwwwww
んほおおおおおお!!! らめええええええええ!!!!!!
あん? 何? 「世の中の女性はさらに辛い出産の痛みを知ってる」って?
知るかボケェェエエエエ!! 元気な男の子ですね!! ってやかましいわ!! おめでとうございまーーーーす!! たすけて
いや出産はいいよ出産は。だって痛みの向こうに希望があるじゃん。娘息子が育って色んな思い出作って、結婚式とか出席しちゃって、嫁と一緒に人生全うして……
でも骨折は違う。その先には絶望しかない。まず会社に松葉杖で通わなきゃいけない。何? 骨折した理由とか上司に言わなきゃいけないの?
そんなん交通事故とかの偶発的な不幸とは違うから十中八九「お前何してんねん……」やろ? ナメてんの?
まあいいや、話を戻そう。ストレッチャーまで移動する間、リアルに「んああ!!」とかアホくさい悲鳴を上げてたと思う。マキバオーかてめーは
動くたびにブランブランになった足に痛みがダイレクトに伝わる。途中当て木みたいなのをやったけど、それすら痛い。
人間痛みが限界付近を行ったり来たりしてると
あっすいません、ああっすいません!あっあっ(ry
みたいな感じで意味もなく謝りだすらしい。この時の僕がそうだったから
そんなアホなやり取りを繰り返しながらやっとストレッチャーに到着。救急車までそのままスライド
大丈夫、すぐよくなるよ。
友達の温かい言葉が胸を打つ。そうだ、僕にはこんなに優しい友達がいるじゃないか! でも、その時点では胸より足が痛くてウンウン頷くしかできなかったよ。めんご
救急車のピーポー音に動転して若干息を荒げながらも、徐々に現実に帰る。急に明日の心配が襲ってきた
やべえ、仕事どうしよう……
入院保険とか入ってねぇ……
嫁になんて言おう……
僕の汗だく汁だくオツムの中で色々な現実が飛び交う中、一番はまず嫁だ。
こんなすっとぼけた俺にも嫁がいる。普段はのんべえな嫁だが、心配してくれるに違いない。そんな折に、救急隊の一人が話しかけてきた
救急隊「ご家族はお近くにいらっしゃいますか? できれば電話でご連絡を……」
そうだ、電話だ!!
ぼく「おそらく自宅に妻がいますので……」
救急隊「わかりました」
よかった、じゃあ救急隊員さん、そちらのバッグに僕の携帯電話が入ってますのでちょっと取っていただけm……
救急隊2「はい、荷物です! 電話を探してください!」
え? あ、俺?? 自分で?? 痛くて動けないんだけど……
だが救急隊の視線は真面目だ。とてもじゃないが怪我人をおちょくってギャハギャハいうタイプには見えない。考えてみれば今の世の中、モンスター患者も多いんだろう。「お前俺のバッグから財布抜いたやろ! ムキー!」とかいうイカレポンチも少なくないのかもしれない
仕方ない。甘ったれな自分を奮い立たせながら頑張ってお腹の上にのっけたバッグをゴソゴソして電話を探す。
いてええええええええええwwwww
足じゃないとこでも動かすといてええええええええええwwwwww
全身敏感状態となった今の僕にとって、日常の当たり前な行動一つでもアヘ顔ダブルピース昇天レベルの刺激となりうる。だがこんなことで負けてられない!! 不屈の闘志で電話を見つけ、嫁に電話を掛ける。
ここで予想する。
この時間だと嫁は通常、家で一足先に晩酌をしている。いつもなら、そこに俺が帰ってきて一緒に飲むのだが、急にこんなお知らせが来たらどうなるだろう……
あんた、何してんの……
とか言われるだろうなー。ああー、この痛みの中、その反応に耐えられるかなー……とか思いながら、電話を掛ける。嫁、電話に出る。俺、息荒めに話し出す
嫁「もしもし」
ぼく「もしもし、ごめん今日帰り遅くなる……足を骨折しちゃって、ブランブランになっちゃって(震え声)」
なんだろう、この言葉選びのセンス。「帰り遅くなる」って、全然辛そうじゃないじゃん。こんなん伝わらないっしょ。ちょっとカッコつけようとしてる自分が痛い。足も痛い
でもこの息の荒さなら、きっと嫁はこのヤバイ状況を察してくれると思う。そらお前、俺ら夫婦よ? そのへんはツーカーな感じで分かってくれるっしょ?
一呼吸置いて嫁は言った
嫁「えー……何してんの……」
ですよねーwwww
わかってる……俺がバカだったの……
嫁の呆れ声にさらに心を折られながら事の経過を話す。受け入れてもらった病院も知らせて一旦電話オフ。たぶんこの20分くらいでタンスに小指1000回分くらいぶつけた痛みを味わったと思う。心も含め
ここで受け入れ先の病院に到着する。
だがこの病院、とんでもなくヤバい病院だったのだ……
次回の骨折ダイアリー:骨折ダイアリーVol.2
初めまして。なんかの検索でフラフラ〜とたどり着いてから、せいじさんの書かれる文章にハマってちょこちょこ拝見してます。
こちらの投稿。あまりに面白くて、夫と二人でヒーヒー笑いながら読みました。
ご本人辛い体験だったのに申し訳ないですが
遡って続編も拝見させていただきます。
これからもチラチラ拝見しながら、いっぱい笑わせていただきます。ブログ記事たのしみにしています(^^)
>JADEさん
コメントありがとうございます!
なんか、こんなに楽しんでいただいて久々にブログ書いててよかったと思いました……
いいんです、僕の辛い出来事もこうやってみんなの楽しむ材料になってくれれば自然といい思い出として記憶に残りますから!
現在続編をリライトしてボリュームアップ版でお届けするべく日々頑張っております!
実は過去の骨折ダイアリーの続編(リライトされていないやつ)を拝見しようとしたら、何回やっても、さらには日を変えてもどうにも表示できず、ダイアリーvol.3くらいから読み進めることができませんでした。
凄く残念でたまらなかったのでリライト&ボリュームアップはとても嬉しい知らせです。
ものすごく楽しみにしてます!(^^)
でも、無理せずゆっくり更新されてください。
そうでしたか!遅筆ですが最近vol.4をアップしました!
色々併行してやっていたりでなかなか骨折ダイアリーが進みませんが、完結できるように頑張りますー!