演技が上達しない、いつまで経っても先生や師匠から良い評価をもらえない……俳優を目指す人の多くが悩みに悩む「どうやったら演技がうまくなれるんだろう」という話題。答えは本当に単純
うまくやろうとしないこと
オイオイオイもっと気の利いた答え用意してなかったのかよ? と思うかも知れんが、これしかないんだよ!!
今度は悩んでいるあなたに聞きたい。
あなたの思ううまい演技ってなんですか?
感情表現が豊かなこと? 泣くべき所で泣ける演技? セリフの抑揚? どれをすくいあげてもクソです。そんな演技論で稚拙を語る人間が僕は大嫌いです。
もうね、どゎい嫌い
そんな僕が、一視聴者の目線で語ります。
もくじ
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演技がうまい人間なんて存在しない
いきなりタイトル全否定でごめんなさい。しかしこれが真理なんです
世の中は有名な俳優さんで溢れています。時にそんな人たちの出ている作品を観て、「うまいなー!」と驚嘆することも多々あります。
でもそれは普遍的な「演技がうまい」ではなくて、僕にとって「視聴者に思いや状況を伝えるのがうまい」ということです。大根役者だとか、棒読みだとか全く関係ありません
例えば有名な黒澤作品。世の映画好きはこぞって「三船敏郎が」「仲代達也が」と声を荒げて褒め称えますが、僕はそこまでだとは思いません。
第一セリフが聞き取りにくく、何を言ってるのかわからないところも多いです。特に志村喬さん
でもそれで演技がヘタだとは思いません。それは当時の機材の問題もあるだろうし、演技なんて流行廃りもあるんだから。当時は目をギラつかせた、いわゆる「目で語る」演技が今より顕著でした。
対して一般的には演技がヘタと言われがちな倉田てつをさん。僕は彼の演技が大好きです。真っ直ぐで、不器用で、でも強さの中に優しさが見える温かい演技を見せてくれます。そう、仮面ライダーBlackです
だから彼を見て僕は「うまいなー!」と唸ります。
先人達が「演技に正解はない」と言っているように、演技にうまいもヘタもないんです。
お客様目線で考えるならば、「視聴者の好き嫌い」がすべてです。そこを起点に「いい芝居」「悪い芝居」の価値観なんてコロコロ変わります。
あなたを指導している役者出身の先生や居酒屋で偉そうに演技論を語る俳優くずれが、果たして万人の心を掴む演技ができるでしょうか? 万人どころか、100人すら難しいでしょう。
演技の目指すところとは「感情・シチュエーションなどの要素を視聴者にダイレクトに伝えること」で、「自分がそれらしく振る舞えているか」とは違います。
つまり、偏った視点での「うまい演技」は存在しますが、広い視点を用いた場合の「うまい演技」は存在しません。
うまい演技を志すより自分のうまい見せ方を考えた方が良い
僕には幾人かの演技の師匠がいますが、その中の一人に言われました。
「せいじはもっと自分の見せ方を知った方がいい。いいんだよ、役者なんて大根でも。」
これは衝撃的でした。当時は僕も「うまい演技とは」みたいな感じで迷走してました。なんていうか、「うまい」だけじゃ目指すべきところがわかんないんですよね。
ある人は言います
「うまい演技は自然な演技だ」と。
でも想像してみ? 僕らが自然にしゃべってるシーンなんて、映像にしたらただのうすら寒い日常の一コマじゃない?
しかしそれを意識すると、今度は自然じゃなくなる。結局は観る側の勝手な解釈なんです
抑揚がつきすぎた大げさな演技でもいいんです。観る人が感動で「わー!!」と叫び、「かっこいい!!」と騒いでくれるなら。
元々娯楽であったはずの映画やお芝居に、やれ「芸術性」だの何だのと、おかしな付加価値を求めだす人間がいるおかげでつまらない作品が世に出されます。小難しく芸術性を押しだすことで「これを理解して評価できる俺カッコイイ」という評論家気どりを生み出してしまうんですね。
人間ひとりひとりにはその人にしかない個性がどこかにあります。みんなから愛される世の俳優さんが美男美女だけではないことが何よりの証拠です。
事実、僕が所属していた劇団に新人として演技未経験の50代のおじさんが入ってきましたが、素人目に見てもその演技は棒読みで動きもチグハグとヒドイものでした。しかし、舞台で演技を公開したところ、多くの人から「あのおじさん誰?」「あのおじさんおもしろい!」「動きはぎこちないけど、そういう役なんだと思った」という意見をもらいました。
仲間内では演技が稚拙に見えても、世に出るとそれが「らしさ」として認められた瞬間ですね。
だから、「演技が上手くなるには」と悩んでる方はもっと自分の個性を知って、それをどううまく見せるかを考えた方が演技の世界にいて成長します。演技=アウトプットだけに注力するのではなく、自分そのものをもっと知ること。それが人を惹きつける俳優への第一歩です。
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幼稚園のお遊戯と一緒にされてはいけない
前項までで「うまい演技など存在しない」ということはわかったと思います。
しかーーーし!!
「じゃあ自分の思うさま動けばええんやろ?」というのとは違います。「うまい演技は存在しないが、ヘタな演技はある」ということです。
色々指導を受けてきて、僕は演技とは「ロジック」だと思いました。ロジックとは論理、つまり組み立てられる要素です。
自分が演ずるこの人物は「なぜ」こんな行動に出るのか? 「何が」したいのか? 「どこから」来たのか? そういう謎を一つずつ埋めて行くんです。
わたくし演じる「せいじ」は1986年生まれのかに座の30代男性。好きなものはおせんべいで、嫌いな人間のタイプはすぐ怒る人。3人兄弟の長男だが一人っ子期間が長いためマイペースな性格。先日妻とケンカしてちょっと落ち込んでいる様子……
とまあ、これだけ掘り下げるだけで演技の方針って結構固まってきませんか?
これがセリフだけの台本だと、そのセリフの部分だけ「怒ってる」演技になり「泣いている」という場当たり的な感じになってしまい、その人物の人となりも分からなければ魅力も感じられないつまらない作品になってしまい、そういう演技の仕方を「幼稚園のお遊戯」と揶揄されることがあります。
日本では海外のように学校などで演技学科などが一般的ではないので、どうしても感性頼りの演技になりがちです。そんな演技を続けていると必ず成長は頭打ちになります。
でも、今では演技とは「学ぶ」ことであり、「天から与えられるものではない」と思ってます。
じゃあ「学ぶ」とは? 一体何から学べばよいのか?
その閉ざされた演技の道のりに一筋の光を与えてくれたのが、ステラ・アドラー氏著作の「魂の演技レッスン22 〜輝く俳優になりなさい!」でした。
本書は演技上のプランや構成の仕方を、あいまいな「感性」ではなくきちんと文字にして起こしているので非常に参考になります。なおかつ、会話形式で解説をしているページも多くありますので「何がいけないこと」で「何がとても良い傾向」なのかもよくわかります。演技を志す者ならば、絶対に持っていて損のない一冊です。
一人の師匠を信じない
演技指導を受けている人は誰しも一人は「師匠」と呼ぶべき存在がいると思います。厄介なのがその師匠の存在です。特に尊敬できる人物であればあるほど
その人の指導を受けてある程度何かを掴みだすと、「この人の指導は正しい!」と思いこんじゃいます。これが非常に危険
その師匠だって、すべて正しいことを言っているわけではないんです。正解なんてないんだから
それを真に受けて、その価値観で「あの芝居はヘタ!」とか「こんな演技はクソ」とか言っている俳優さんの痛いこと痛いこと……たとえ超ヒット作を牽引した俳優でも、次の作品で成功するとは限りません。それこそ一寸先は闇
だからこそ演技には、一般職でも使うPDCAサイクルに従って視聴者の動向を探らなきゃいけません。
PDCAサイクル(PDCA cycle、plan-do-check-act cycle)は、事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法の一つ。Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4 段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する
あくまで良し悪しを判断する主体は視聴者でありファンなんです。
その足掛かりとして師匠の言葉があると思ってください。師匠は一人でなくともいいんです。いっぱいいればそれだけ意見が聞けてあなたの役どころの幅がつきます。その中でやってみて評価の高かったものを身につけて行けばいい
特に稽古。「稽古は失敗するための場」とよく言います。だって失敗しても誰も迷惑しないんだもの。そこで得た教訓と教養が舞台や映像で活かされるんだから
師匠は一人でなくていい。だから時間がある時は行ったことのないワークショップなんかに参加するのも上達への一つの手ですね。
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演技はあなたの経験値
ここまで読んだ感想として「どうすれば上手くなるかっていう答えが出てねーじゃねーか!」と思ったあなた。
まずはその甘い考えを捨てましょう。ショービジネスの世界は単純作業と違って「この練習をすればみんなこのレベルまで上達するよ」なんていう都合のいい上達法はありません。大スターから一劇団の端役まで、誰しもが「自分がどう演技するか」で悩み続けています。中にはその重圧で自らの命を断つ人だっています
ここまで熱く語ってきましたが、演技とはあなたの人生の経験値が如実に反映されるものだと思います。それゆえに、ゴールなどなく今この瞬間も勉強の真っ最中です。
先ほど紹介したステラ氏の書籍やその他の演技レッスン本の通りに演技ができたとしても、それが「うまい演技」だと人に感動を与えられるでしょうか? そうは思えませんよね。おそらく無理でしょう
とにかく色々なことに手を出して下さい。行ったことのない地に行くもよし、聴いたことのない音楽を聴くもよし、とにかく体験したことのないものにどんどん飛び込んでいきましょう。そこには、あなたが今まで知らなかった「感動」があります。そこから得た感動はあなたが演技をする時の小さな所作、言葉の抑揚に現れます。その小さな変化が他人を感動させる材料になるんです
するとこの時は正しかったことが、歳を10年とると180度違う結果になっていることだってたくさん出てきます。だから演技に対する心構えを一言でいうならば
決めつけないで!
です。
本の知識も、先人のノウハウも大切ですが、一番大事なのはあなたの個性です。エキストラでもなく役をもらえたら尚更。あなたでなければならない「何か」があったからその役をあてられた。そう考えると自分の「良さ」とは何なのか? 今やるべき演技とは何なのか? その答えが見えてくると思います。
僕もそう信じて勉強し続けます。
そんな話です。
エンド
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