2016年4月28日 11:00
朝6時にたたき起こされてしばらくダラダラしていた。たたき起こされたとか言ってるけど、そもそも寝てない
相変わらず足は痛いが、動かさなければ叫ぶほどでもなくなった。一晩明けると変わるもんやな
しばらくすると、担当の先生が入ってくる。
「体調はどうですかー?」
ここで僕の常識人センサーがビンビンに反応する。おお、人間だ!!!!
イカレポンチなメンバーが目立ちまくってたこの病院で、初めて信頼感、安心感、人間感を揃えたお医者さんが来た。これからこの先生を仏先生と呼ぶことにする
仏先生は年齢50代そこそこ、細身で優しそうな男性外科医。色々とだらしないこの病院のゴムバンドみたいな存在。この人になら、身を任せられる……
仏先生「この怪我は痛いよねー。向こう脛ずっと蹴っ飛ばされてる感じだよね」
うんうん、そんな感じ。やっと怪我について親身に考えてくれる人が現れてテンション上がる僕。「会話」をしてくれる人がいるってのはほんまありがたいこと
ほんで、昨日撮影したレントゲン写真を見せられる
ヤバくない? 松田翔太も真っ青なくらいパッカーン! な右足。人生で経験したくない怪我リストで指折り数えるランクだけあるわ
手術の手順は、腰椎から麻酔を入れ、全身麻酔に移行、それから金属を骨中に挿入。「髄内釘固定術」という手術なのだが、詳しい内容については以下の記事を読んでね↓
全身麻酔……今まで一度も経験したことは無いけど、歯医者さんで親知らず抜く時よりはスゲェ麻酔なんだろう。経験者に聞くと、吸入して数秒カウントしたらもう落ちていたらしいが、「万が一目覚めたらどうしよう」とか「もし俺が万に一人の麻酔効かないマンだったらどうしよう」とか、初心者ならではの余計な心配が頭をよぎる。
そんなことを考えているうちに手術の時間は訪れ、改めて担当医の仏先生と看護師の方々が物々しく入室してきた。その際、手術室への移動のため、またストレッチャーに移されるのだが
ぼく「お!?」
ベッドよりストレッチャーのほうが柔らかくて寝心地がよく、思わず感動の声が漏れる。ストレッチャーより寝心地の悪いベッドって、もうベッド名乗っちゃダメだよね
いよいよ手術室へ移動となり、戦場にでも行くかのごとく口を一文字に締め、嫁へ「行ってきます」と遺す。気分は完全にソルジャー
いや、手術って言っても、足だからな?
そこまで気ィ張ることでもないからな?
そう考える人が大部分だと思うし、今だったら僕もそう思う。でも初めての全身麻酔だったから怖かったの……ごめん
もくじ
スポンサーリンク
無記憶手術
僕の不安をよそにストレッチャーで迅速に運ばれ、手術室に入室。
手術室……
うおおおおおおおおお!!!
テレビで見た手術室とおんなじだ!!!
無機質な手術台、そこを照らす輪っか状のライト。客観的にしか見たことのない景色がそこに広がっていた。ああ、これから俺、手術受けるんだな……
何かの物語の主人公にでもなった気分の僕は、テンションが上がってきてやたらしゃべりだしてしまう。
「初めてこんなとこ来ましたよ」
「腰椎の麻酔って痛いですか?」
今思えば、ほぼ素っ裸のアラサーが何手術ごときでテンション上がってんだと思う反面、不安も大きくて若干錯乱気味であったのは否めない。手術直前に調べたところでは、腰椎麻酔ってかなり痛いって記事がちらほら……この情報一つでもう脂汗ダクダク。しかし、やらないと手術できない
覚悟を決める間もなく手続きは進められ、僕も急かされるように背中を丸めて「お注射お願いします」のポーズをとる。ほぼ素っ裸で
麻酔医の先生が
「はーい、少しチクッとしますよー」
ぼく「(えっ? 少し? めっちゃ痛いんじゃないの????)」
思っている間に針が刺さる。確かに若干チクっとした。でもそんなに痛くない
「はーい、じゃあ麻酔入りますよー。少し痛いかもしれませんよー」
ぼく「(ここからかー!! ここからめっちゃ痛いのかー!! きゃー!! 死ぬー!!)」
その瞬間、背中(背骨)に衝撃というか、圧がかかったような鈍い痛みが襲う。
うおおおおおおおお!!!!
……あれ、でも思ったほど痛くないし、もう痺れてきたぞ??
なんだかんだで腰椎麻酔は意外と痛くなかった。こんなもん、足の痛みに比べたらマジでしっぺとタイキックくらい違う。しっぺ痛いけど
早速麻酔が効いてきて、緊張もあってか更にテンションが上がる僕。
ぼく「うわ、足の感覚がない!(でも骨折れてる感じは分かるから)気持ち悪い!」
こんな余計な一言を発したばかりに助手っぽい人が焦り出す
「気持ち悪いですか!? 頭が痛いとか!?」
いや、そういう意味じゃないんです……変に騒いでごめん
この後、吸入器でカウントするうちに麻酔が完全に効いて寝ちゃうんだろうなーとか思っていたが、そんなこと考えている間にもう意識は虹の彼方に飛んでいた。ほんで気付けばもう病室のベッドの上
嫁曰く、麻酔が切れて目が覚める前後はうわ言のようになんかゴチャゴチャしゃべってたらしい。やべえ、なんか恥ずかしいこと言ってないかな……
とりあえず最初の山場である、手術は仏先生のナイスプレーにより無事終えた。ナイスプレーの中身全く覚えてないけどほんまよかった
だが神は僕に安息を与えてはくれなかったのだ。
術後パーリーナイト
2016年4月28日 17:00
手術を終え朦朧とする意識の中、なんとか病室へ帰ることができた。傍らに嫁。足元に仏先生。
術後の簡単な日程と、長期的な予定を聞かされ「あとは、お二人で……」と見合いの仲人みたいな雰囲気で仏先生退出。
へへ……なんか情けない姿見せちまったな……
まだマンガの主人公設定が抜けていない雰囲気で嫁をチラ見。見栄を張ってはいるものの、髪を洗っていない上寝癖でモシャモシャになっていて、誰がどの角度から見てもダサい。
嫁「あー疲れた」
そうだよね。待ってる人間はやることないし、かと言って安心っちゅーわけでもないもんね。始終うわ言のように僕がボソボソしゃべっていると、面会時間が終了。
嫁帰る。寂しい……
寂しいんだけど、手術後に最初に思ったことは、「腹減った」
ご飯を食べてもいいという許可が下りたため、嫁の帰宅後に遅めの夕食が運ばれてきた。
献立はおかゆ・何かの味噌汁・何かと春雨の和え物・きゅうりの漬物。曖昧だけどこんな感じ
手術後初の食事はとにかくモリモリ食べた。本来は一時的に食欲がなくなるらしいんだけど、僕は全然そんなことなかった。サイヤ人かっつーくらいムシャムシャ食ってた
ほんでとりあえず食事を終えると、急に寂しさが襲ってくる。殺風景を超えた事故物件並みの部屋に、動けない自分、明かりは古く味気ない蛍光灯……動いている物体が室内にまったく無い。景色を見る窓という上等な物はなく、本当に閉鎖された空間。嫁曰く、この環境は払っている部屋代に見合わないらしい。要するに、割高だと
まあ、手術してもらえただけでも、ありがたいよなぁ……と思いつつ、転院はしたいなとも考えていた。
手術後の初夜。
個室なので消灯時間を守らなくても問題ないのだが、ここは一刻も早く回復させたいと思い、睡眠を優先。手術当日だというのに、若干足を動かしても問題がないそうなので、横寝を試す。
おお、これなら割と腰が痛くない! 僕は希望をもって目を閉じた。
だが、このクソ足は僕を容易には寝かせてくれない。目を閉じて30分くらい経ったころ、足は熱を持ち始め、ジンジンと痛みを感じ始めた。
寝る寸前に優しい看護師さんが「足のしびれや、痛みが出たら遠慮なくナースコールで呼んでくださいね♪」と優しい言葉を掛けてくれたのを思い出して、一瞬呼ぼうかと考える。
でも、このくらいの痛みって当たり前じゃないのかな……?
看護師さんに変な気を遣ってしまう。なにその遠慮
とりあえず男なら耐えんかい! とばかりに自分を奮い立たせ、意地でも目を閉じる。
それから3~4時間は経っただろうか。
一応は眠れたんだけど、ついに痛みに耐えきれず起きる。しかも、足のしびれが悪化してる……
これはナースコール使っても怒られんだろ……
そう思いナースコールを押す。するとさっきの優しい看護師さんと違う人がやってきた。
「はぃ?」
目の前にいるのはポッチャリを超越したボッチャリ体系の仏頂面系女子。この病院にありがちな体型と声だ!! 同種のエンカウント率高すぎやろ
以降は彼女のことをボチャ子と呼ぶことにする。
手術後の弱った僕は若干怯えながらボチャ子に聞く。
ぼく「すみません、足のしびれがさっきより悪化しているのですが、大丈夫ですかね……?」
という僕の質問を食い気味に
ボチャ子「大丈夫じゃないですか?(イライラ」
若干切れ気味に返答。しかも疑問文で
この瞬間の僕の脳内↓
出典:集英社コミック『ジョジョの奇妙な冒険 Part7 スティール・ボール・ラン』より
直後にボチャ子は踵を返し、ドアをバタン! もはやこの部屋に来たのが幻かと思うくらい鮮やかな退出。
呆気にとられた僕は、「もしかしたら、症状に詳しい先生を呼びに急いで戻ったのかもしれない」と今思えば病気なんじゃねーかってくらいポジティブな想像をしてた。当たり前だけど、30分待っても1時間待っても誰も戻ってこない。
俺、あいつ嫌い!!!!
もう一回ナースコール押しても、またあいつが切れ気味に来ることだろう。仕方なくその日も寝ずに朝を迎えた。
今日からゴールデンウィーク。
世間はキャッキャウフフな連休だろうが、僕はこの動物園で骨折した足を愛でながら英気を養わなければならない。
幸いなことに病院の主要キャラで仏先生だけはいい人だし、あの人を拠りどころにすればなんとかなるだろうと前向きに考えていたのだが、その希望はいとも簡単にぶっ壊されるのであった。